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- 0. はじめに
- 1. 異世界の死生観が現代と異なる理由
- 2. 異世界の「死なない者」と「限りある命を持つ者」の対比
- 3. 「死の概念」が異なる世界で生まれるドラマ
- 4. まとめ 〜異世界転生モノは「異文化交流」の物語でもある
- 5. 参考図書
0. はじめに
異世界転生モノ*1の物語は、現代人が異世界で新たな人生を歩むという設定が特徴である。
その設定の魅力は「異なる価値観に触れること」であり、異世界の文化や社会構造が現代とは異なることから、作品を通して現代社会を俯瞰できる点が興味深い。
その中の1つが「死生観の違い」である。
私がそのことに思い至ったキッカケは、マンガ「異世界ありがとう」の第67話で、登場人物同士の会話を読んだことだ。
以下にその部分を抜粋したい。
※以下の引用部分において、チバは異世界転生した現代人(少女に異世界転生したサラリーマン)で、おっさんは異世界で仲間になった異世界人である
チバ:もうすぐ死ぬ人が隣で笑顔で過ごしていると、自分がどういう顔でいればいいかわかんなくてさ……
おっさん:お前らの元いた世界って楽園なのか?死がよほど珍しいとみえる。
おっさん:もうしばらくすればあの女は別の世界に旅立つ。生きていれば誰しもがかならず行く場所じゃ。それだけのことじゃ。
チバ:意外… おっさんは死後の世界って信じてるんだ。
おっさん:? そりゃ当たり前じゃろ。
おっさん:死んだらそこでぱっと無になるなんて、そんな雑な話があってたまるか。
おっさん:お主らの世界ではそうなのか?
チバ:………


いかがだろうか?
個人的にはこのくだりを読んだとき、「死がよほど珍しいとみえる」の文言にハッとした。
そうなのだ、我々の世界と異世界とでは「死」の価値観が違うのだ。
そしてその違いが、異世界転生モノでしか作り得ない話を生みだしているのではないだろうか。
1. 異世界の死生観が現代と異なる理由
異世界における「死」の概念は、現代社会とは大きく異なる。
例えば、魔法や特殊な技術によって死が回避できる世界では、死の恐怖が薄れる傾向にある。
一方で、魂の概念が強く根付いている世界では、死が神聖なものとして扱われることもある。
死が回避できる世界では、蘇生魔法や時間巻き戻しのシステムが存在し、死が「一時的なペナルティ」として扱われる。
また、魂の概念が根付いた世界では、死は終わりではなく「次の段階」とされる。
転生が前提の世界では、死は恐怖ではなく受け入れるものになり、戦死や殉教が名誉とされる文化もある。
例えば、戦士の死を崇高とする世界では、主人公が「生きることの価値」を説いても理解されない。
「異世界ありがとう」では蘇生魔法があったり、戦死が名誉となったりはしないが、死が身近に存在し、現代社会とは死生観が異なっている。
こうした死生観の違いが、異世界転生モノの独特な世界観とドラマを生み出しているのだ。
この死生観の違いは、死が身近であることとは逆に、異世界では死があまりにも遠いことからも発生している。
2. 異世界の「死なない者」と「限りある命を持つ者」の対比
2-1. 不死の種族が抱える苦悩とは?
不死の存在であるエルフや吸血鬼などは、死を迎えないことが前提の生き方をしている。
しかし、彼らにとって時間は無限であり、その結果として「生きる意味」を見失うことがある。
また、彼らは短命な人間とは時間の感覚が異なり、人間の一生が彼らにとっては「ほんの一瞬の出来事」に過ぎない。
異世界転生モノではないが、死を迎えない種族と人間との生きる意味を考える時、2021年に第14回マンガ大賞を受賞した「葬送のフリーレン」は、その好例だろう。
「葬送のフリーレン」は、魔王討伐後の世界を舞台に、千年以上生きるエルフの魔法使い・フリーレンが仲間の死を通じて「人の生の尊さ」を学ぶ物語だ。
長命種と短命な人間の死生観の違いが深く描かれ、異世界ファンタジーながらも人生や死を哲学的に問いかける作品である。
こちらの作品は少年サンデー本誌やサンデーうぇぶりのアプリから読むことが可能だ。
2-2. 短命な人間がもたらす価値
エルフや吸血鬼などの死を迎えない種族とは逆に、限られた寿命を持つ人間は、その時間を最大限に活かそうとする。
エルフや吸血鬼にとって、人間の短い人生の中での選択や覚悟が新鮮に映ることがある。
限られた時間の中で何を成し遂げるかを重視する人間の価値観が、異世界という舞台だからこそ、現代社会以上に際立って見える。
3. 「死の概念」が異なる世界で生まれるドラマ
3-1. 「死を避けるのが正しい」とは限らない異世界のルール
異世界によっては、「死が特権」とされる場合もある。
例えば、特定の信仰により、死後の世界が現世よりも重要視される文化では、死を迎えることが救済となる。
逆に、死が軽視されすぎる世界では、人の命が取るに足らないものとして扱われることもある。
このような極端な死生観が、物語の中で緊張感を生む要因となる。
3-2. 現代人主人公の価値観は異世界でどう受け止められるのか?
現代社会では「命を大切にする」という価値観が根付いているが、異世界では必ずしもそうとは限らない。
主人公が「無駄な死を避けるべき」と主張しても、異世界の人々には理解されない場合がある。
この価値観の衝突が、異世界転生モノのドラマを生む要素の一つとなる。
4. まとめ 〜異世界転生モノは「異文化交流」の物語でもある
異世界転生モノでは、不死の存在や短命の者たちがいることで、「時間の使い方」や「限られた人生の価値」が鮮明に描かれる。
無限の時間よりも、限られた時間の中で何を成し遂げるかが重要である、というメッセージが込められている作品も少なくない。
異世界転生モノの魅力は、単に異世界で活躍することだけではなく、「異なる価値観との交流」を描く点にある。
特に「死生観の違い」は、物語の核心となるテーマの一つであり、現代人の心理を映し出す鏡ともなっている。
異世界転生モノを通じて、私たちは「生きることの意味」を考え直すことができるのかもしれない。
5. 参考図書
本記事の最後に、記事内で扱った「異世界ありがとう」と「葬送のフリーレン」を紹介したい。
5-1. 『異世界ありがとう』
著者:原作:荒井小豆、作画:ジアナズ
あらすじ:同窓会で意気投合したアラサー男性2人が、不運に見舞われ異世界で美少女として転生し、友情を深める物語。
5-2. 『葬送のフリーレン』
著者:原作:山田鐘人、作画:アベツカサ
あらすじ:魔王討伐後、長命なエルフの魔法使いフリーレンが、仲間の死を通じて人間の生の尊さを学ぶ旅を描く。